Granberg G106B (改) へ Vallorbe ダブルベベルファイルをセットする


Author: Shinichiro HIDA twitter: _shinichiro_
Created: Thu, May 04 10:58:30 JST 2023
Last modified: Sat, Jun 10 15:16:00 JST 2023

Vallorbe LC10020-2279-8
Vallorbe LC10020-2279-8 ダブルベベルファイル
Vallorbe のダブルベベルファイル LC10020-2279-8 には、先端、及び末端に約φ5mmの円筒形のグリップ部分があり、そこを前後のホルダー部分にクランプしてネジで締め込むことでセンターにセットできます。ただし、ファイルの固定が先端と末端の2個のネジだけに頼ることになるため、ネジが緩むと回転してしまう恐れがあります。内径 4-5mm の Oリングを取り付けて締め込むと良いかもしれません。次の画像は改造前のオリジナル G106B にクランプしてテストしているところです。なお、やはりファイルホルダー部を切削加工しないと干渉するためファイルひねり角の自由度が不足します。
Vallorbe LC10020-2279-8 ダブルベベルファイルをオリジナルの G106B でクランプする Vallorbe LC10020-2279-8 ダブルベベルファイルをオリジナルの G106B のリアファイルホルダーにクランプしているところ
PFERD、BAHCO のダブルベベルファイル用のアダプタは使用しないため、先端、末端用とも取り外してください。内側へ押し出してぬくと Oリングとも外れてくるはずです。
  1. パッケージに入った状態では、ハンドルのついている末端側のファイルホルダーが10cm程度前側にセットされた状態になっています。(画像の T レンチはパッケージには含まれません)
  2. まず、末端側、ハンドルのついているファイルホルダーの◯棒と□棒をはさみこんで固定しているマイナスネジを十分に緩め、やすりが入る長さがとれるように、◯棒、□棒の長さいっぱいの位置まで十分に下げて (ちょっと渋いですがこじたりせず、じわじわ下げてください。こじると折れます)、先に緩めたマイナスネジを軽く○棒が動かなくなる程度に締め込んでくださいこのネジを強く締めすぎるとネジ穴部分で鋳物が折れます
  3. 前後のファイルホルダー底部のネジ穴に付属の小さい方の蝶ネジを取り付けてください。
    ファイルホルダー内にあらかじめセットされているアダプタ(前: 黒の樹脂性、後: ステンレスパイプ)は、Vallorbe のダブルベベルファイルでは必要ありませんので、Oリングごと外してください。手で内側へ押し出すかマイナスドライバーで押し出すと簡単に外れます。
    再度アダプタを取り付ける場合は、アダプタ真ん中あたりに O リングをつけた状態で内側からファイルホルダへ挿入し、竹串やキャブ調整用などの小さいドライバーなどで Oリングがファイルホルダー中央あたり、ファイル固定ネジのある未切削の部分の手前の段差にあたって止まるように押し込んでください。
  4. Vallorbe ダブルベベルファイルの末端側を G106B(改) のハンドルのついている末端側ファイルホルダーに深く差し込み、戻しながら先端側の丸いグリップ部分を前側ファイルホルダーの蝶ネジのあたる位置にセットして軽く固定します。
  5. ハンドルのついている末端側ファイルホルダー底部の蝶ネジが、Vallorbe ダブルベベルファイルの末端側円筒部にあることを確認します。もしずれていたら先端側を微調整してください。
  6. ファイルの位置が決まったらファイルを適当な(50°くらい)角度にひねって、前後ファイルホルダー底部の蝶ネジを軽く締めて固定します。
  7. チェンソーに対象のソーチェンを取り付け、ソーチェンを少し強めに張った状態に調整し、作業しやすい位置に設置した万力やスタンプバイスでガイドバーをクランプし、ソーチェンがバイスに接触せず、手で回転させられる状態て固定してください。
  8. 万力やスタンプバイスの上あたりに、G106B(改)のガイドバー取り付け部分、ベース部をセットします。まず、ベース部横に大きな蝶ネジを取り付け、軽く緩めた状態でガイドバーをまたがせ、大きな蝶ネジを軽くしめて仮止めします。 次に、ソーチェンが横に振れないように押さえる部分のラインが、リベット3つの中心あたりにきて、ソーチェンと G106B(改) の平行がとれるように大きな蝶ネジを緩めて位置と角度を調整し、再度仮止めし、ソーチェンの横方向の押さえ金具からリベット3つの上半分が均等に見えているような高さにセットし、ソーチェン横方向の振れ止めの両サイドから6角キャップボルトを両側均等に軽く手で締め、最後にベース部横の大きな蝶ネジも締めこんで位置を決めててください。ソーチェンの横振れ防止金具のキャップボルトを強く締めてしまうと、次のカッターを研ごうとしてソーチェンを送ったときに、ベース部分が動いてしまうことがあります。キャップボルトはあまり強く締め込まずに、振れ止め金具がソーチェンのリベットにかるく触れている程度にすると良いでしょう。
    ソーチェン、カッターの種類によってはベース取り付け位置をリベット上端が隠れるくらいの位置にセットしないとうまく研げない場合があります。
  9. 付属の蝶ナットを用意してください。 先にガイドバーに取り付けたベース部に、ファイルスライド部を取り付けます。スライド部の◯棒に取り付けられているピボット部のボルトをベース部上部の台座の穴に上から差し込み、下側から蝶ナットで締め込みます。この時、バネのついた黒いスイングリミッターナットと干渉して蝶ナットが回しにくいので、スイングリミッターナットをあらかじめ取り外しておいてください。 その後、ピボット部のボルトに蝶ナットをつけて締め込んでください。 スライド部が取り付けられたら、バネのついた黒いスイングリミッターナットを元通りに取り付けてください。水平方向の角度は最初、30°にセットして、蝶ナットを締めて固定し、あとからソーチェン裏側の研げ具合を確認し好みに応じて調整してみてください。ソーチェン、カッター、求める角度によって変わってきますが、おそらく 25°から35°くらいの範囲にちょうど良いポイントがあると思います。
  10. バネのついた黒いスイングリミッターナットの付け根にある蝶ナットを緩め、スライド部を受けている台座側を少し手前に引くと、ギザギザのノッチ状の噛み合わせが外れて回転できます。これを回転させてスライド部、ファイルのチルト(ダウン)アングルを決めます。噛み合わせをはずさずに強引に回すとなめてしまいますので注意してください。最初はダイヤル目盛を30°くらいの位置でセットして蝶ナットを締めてください。実際に数ストローク研いでみてソーチェン裏側の研げ具合を確認し、好みに応じてあとから微調整してください。
  11. ベース部後方の上部についているダイヤルで、ファイルの高さを制限できます。スクエアグランドファイリングの場合、ファイルがタイストラップやドライブリンク、ベース部のソーチェン横振れ防止の金具部分に干渉するので、最初はやすりがかなり高く浮いた状態になります。ファイルホルダー下部の蝶ねじを緩めて、ファイルのひねり角を 50°程度に調整し固定したら、カッターにかする程度の位置にファイルを置いて、数回下方向へ軽く力をかけ干渉している部分を削り、ダブルベベルのカッティングコーナー部分がチゼルの外角に一致するように再度ひねり角を微調整してから、ダイヤルを右 (RAISE 方向) に回してファイルの高さを制限するとよいでしょう。
    ソーチェン、カッターの種類、求める角度によっては、この高さセットダイヤルの調整範囲を越えてしまうものがあります。その場合は、ベース部の取り付け位置をリベット上端が隠れる程度まで上げる、あるいは下げて高さ調整ダイヤルの範囲にはいるようにしてみてください。
  12. まず、カッター後方に板状のカッターストッパーがしっかり当たっていて、押してもカッターが下がらない状態にします。チェンブレーキもかけるとなお良いでしょう。マスターカッター (最も小さな刃、最もダメージの大きな刃) を数回研ぎ、カッター裏面を確認、各角度を微調整し、チゼルカッターのワーキングコーナーの外角と内角が直線で結ばれ、上刃 (20-25°)、横刃 (85-90°) の目立て角、上刃切削角 (50°前後) が希望の角度になっているかを確認、微調整してください。良い角度がセットできたら、ファイルホルダーにファイルのひねり角の目安位置をマーキングしておいてください。
  13. マスターカッターが希望通りに研げたら、その位置でスライド部の□棒にバネのついた黒いスイングリミッターナットが接触するように調整します。ソーチェンを手で回して同じ方向の次のカッターを研ぎます。
  14. 次のカッターからは、□棒がリミッターナットにあたるまで (やすりがかからなくなるまで) ストロークすれば、同じ角度で同じ大きさのカッターが出来上がっているはずです。
  15. 片側が終わったらファイルを反転させます。上部ピボット部裏側の蝶ナットを緩め、ファイルホルダーのハンドル部分を逆側へ反転し、チルト角も同じ数字の目盛位置にセットしてください。ファイルのひねり角も同じ角度になるよう調整します。ファイルホルダーにひねり角の目安位置をマーキングしておいてください。
  16. 最初のカッターを数回研いで、裏側を確認し、必要なら微調整し、よければそのまま一周してください。
  17. ガレットの掃除
    ダブルベベルでのファイリングができたら、G106B(改) をバーから取り外し、デプスゲージからカッター下部ににかけての間を横刃にきれいにつながる程度まで丸やすり、あるいはスリーコーナーなどのやすりで削ってください(初期に残ってる切削痕の凸があるとできなくはないですが丸やすりで削りにくいので..)。デプスゲージからカッター横刃にかけて、横幅方向への突出がなく、きれいなラインでつながるようにすると良いでしょう。いくつか例をあげておきます。最初の 2つは STIHL 63PS で、次の2枚は STIHL 36RS、最後の 3枚は STIHL 33RS (3/8, .050/1.3mm 日本未販売)です。
  18. デプス調整
    ガレット処理ができたら、各デプスゲージにデプスゲージジョインターをあてて確認し、上に飛び出している部分をすべてのカッターで同じデプスゲージ高さとなるよう平ヤスリ、ダブルベベルの中央などで削って調整してください。最初は水平に削って高さを決めて、最後に前側を斜めに落としてスムースなアールになるように仕上げます。
    次に 3種類のデプスゲージ高さをはかるためのジョインターと実際に測っている画像を載せておきます。この他にもハスクバーナのジョインターなどがあります。
    デプスゲージとカッターとの高さの差は、0.025"(インチ)から0.030"(インチ)、0.64mm から 0.76mm と言われています。広葉樹などのかたい木 (Hard wood) の場合は小さく (.025", 0.64mm)、柔らかい木 (Soft wood) の場合は大きく (.030", 0.76mm) とります。Oregon製のものはインチ表記で .025インチで STIHL のものは mm 表記で 0.65 と書かれています。Oregon製ソーチェンの中には、カッターのデプスゲージ横に 25 と、デプス量を示す刻印があるものがあります。デプスを落としすぎたり、カッターごとに高さが違ってたりすると、切れ曲がったり、ソーチェンが暴れてしまい、非常に扱いにくい危険な刃になりますので注意してください。
これで完了です。(ガイドバーが曲がってたりバリが出ていなければ) 最高に切れるソーチェンができているでしょう。
スライド部の◯棒、ブッシュ部分には定期的に注油してください。当方からの出荷時に低摩耗極圧潤滑剤を塗布してあります。手が汚れにくいような油種を薄く塗布すると良いでしょう。
スライド部をフルストロークしてしまい前後のファイルホルダーがピボット部へかんかん当てないようにしてください。